ファイル共有ソフトの未来 逮捕なのか?

ファイル共有ソフトBit Torrentを使用して放送番組を無断でネット上に流した人が逮捕されましたね。前にShareの利用者が一斉摘発されたことは、記憶に新しい。

確かに、どう考えても権利者の公衆送信権を侵害しているでしょう。また、無数に拡散するファイル共有の性質からすれば侵害者の特定が困難であって、権利者としても捜査機関の力を借りなきゃならない事情もあるだろう。

しかし、ファイル共有ソフトが権利者に与える影響は少ないという実証的分析もあり(新宅純二朗=柳川範之編『フリーコピーの経済学 デジタル化とコンテンツビジネスの未来』(日本経済新聞社・2008年)125頁以下)、また、Winnyソフト開発者の幇助責任が問われた事件においても、著作権の対象となり、かつ著作権者の許諾が得られていないものは約47%にとどまるという利用実態が認定されている(大阪高判平成21年10月8日)。

そうだとすれば、著作権を侵害した者に対して、逮捕し刑事罰を加えるまですることが果たして妥当なのだろうかと思うのです。何よりえふが問題視したいのは、逮捕が事前の警告なしになされた点だ。これは逮捕された者が「警察が捜査していないとされていたビットトレントを利用した」と供述していることから推察できる(事前にあんたビットトレント利用して著作権侵害してまっせと警告していれば、こんな供述しないでしょう)。

アメリカでは悪用されていたBit Torrentがビジネス化されつつあるようです(壇俊光金子勇「ウイニー刑事事件判決について」第二東京弁護士会知的財産権法研究会編『著作権法の新論点』(商事法務・2008年)71頁)。

何故、ファイル共有ソフトを利用した違法配信が止まらないのか。それは市場の需要が大きいからにほかならないっしょ。

刑事罰を科すという手法が大きなビジネスチャンスの芽を摘む結果となっていないか。改めて問われるべきでしょう。

著作権って面白いなー ほんと。なくちゃ困るし、あると邪魔だし。正解がありませんな。

付言しとくと、ShareやWinnyは匿名性が売りだったけどほとんどファイルの第一放流者を特定できるみたいですね。技術はどこまでも進歩していく。うーん。面白い。